竹笹堂「京版画はがき制作体験教室」
【所用時間】14:00〜16:00までの約2時間
【料金】一般3,000円
【開催日】火曜、第1・第3土曜
【予約】前日まで/2名から催行
世界最古の印刷技術と言われている「木版印刷」。図案をつくる「絵師」、それを版木に彫る「彫師」、彫られた版を摺る「摺師」の分業制となっています。今回訪れた「竹笹堂」は、その中で「摺師」の工房として明治24年に創業された竹中木版が展開するお店。その後伝統的な木版技術をいかして幅広い分野を手がけるブランドが「竹笹堂」です。竹笹堂では分業だった作業がすべて行える環境が整えられています。
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摺師の永井さん(写真中央)に教えてもらいます。
竹笹堂は烏丸四条から少し西に入った、膏薬辻子(こうやくのずし)と呼ばれる石畳の路地にあります。街中にこんなにも京都らしい道があるなんて! 風景がガラリと変わりとても素敵です。
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今回は友人のあっちゃんと2人で訪れました。
趣のある京町屋の入り口は150cmの私も少し屈むほどの小さな引き戸。入ってすぐのショップスペースにはぽち袋やブックカバーなど可愛い手摺り木版の紙小物が並びます。
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様々な柄と色がそろうぽち袋は見るだけでワクワクします。
奥の部屋に移って木版画体験開始です。
30種類ほどの図案から1つ好きなものを選びます。永井さんに図案の難易度を相談しつつ、私は「梅の花」に決めました!難しすぎなければ自分で考えたオリジナルのデザインを作ることも出来るそうです。
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トレーシングペーパーとカーボン紙を使って反転させた図案を版木に写し、版木刀で線に切り込みを入れます。
版木に図案を写したらいよいよ彫刻刀の出番です。まず版木刀というナイフの形をした彫刻刀で線の上に切り込みを入れます。永井さんによると、この最初の工程が最終の出来をほぼ決めると言ってもいいほど重要なものだそう。深く彫るほど良いらしいですが力を入れれば線からはみ出てしまい難しい!
難易度の高い「エビ」に挑戦したあっちゃんから「簡単なものにすれば良かった」と悲鳴が聞こえてきます。
次に小さい丸刀でさっき彫った線の外側を彫っていきます。
ああ、この感じ……! 突然、小学生の図工の感覚が蘇ってきました。5本セットの彫刻刀のなかでも、V字の三角刀が一番お気に入りだったなぁ……。でも、実は三角刀は西洋から伝わったもの。線の太さが均一で機械的な印象的になってしまうために、日本の職人さんは使わないそうです。逆に版木刀や丸刀は、力加減や使い方を変化させることで一本の彫刻刀から様々な表情の線が生まれます。
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一番細かい中心の部分には版木刀を使います。
少しずつ彫刻刀の使い方に慣れてきますが細かい部分を彫る時はやり直しのできない作業のためとても緊張します。慎重に彫っているのにはみ出したり、うまくいきません。しかも、慣れない版木は扱いにくく彫っても彫ってもなかなか作業が進まないのです。版木が硬いのは、細かい模様を彫っていくため。硬い木でないと模様が潰れてしまうんだとか。
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最後に大きな丸刀で図案の周辺をかなり深くまで彫っていきます。予想以上に力がいる大変な作業!
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版木に絵の具をのせる筆は昔からの習慣で摺師が自分たちで使うものを竹皮で手作りするのだそう。
版木が完成すると摺る作業に移ります。
絵の具を均等にのばすため、糊を版木に乗せてから絵の具を乗せます。この2つのバランスがムラなく摺るためには重要です。糊と絵の具を混ぜ合わせたらはがきを置いて、バレンでこすっていきます。
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摺る作業もまた力仕事。
出来上がった版をまずは永井さんに摺ってもらいます。摺る前は形になっているか不安でしたが摺ってみるとそれなりの出来で一安心。ところが、いざ自分で摺ってみると、かなり掠れてしまいがっかりです。「摺る事くらい誰にだってできる」と思っていたのは大間違いでした。細かい柄が刻まれた大きな版木を綺麗に素早く摺るプロのお仕事には、やはりたくさんの知識と技術と経験が必要なのですね。
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木版は模様を散りばめたり、重ねたり、自由なレイアウトを楽しむことが出来ます。
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私のように白いはがきに好きな色で摺る方法か、あっちゃんのように色はがきに金で摺る方法か、2種類から選ぶことが出来ます。
手作りの年賀状が完成しました! 版木は持って帰ることができるので水性の絵の具を使って家でも続きを摺る事ができます。
ということで、少し遅くなりましたがHAPPY NEW YEAR! 2017年も様々な体験に挑戦したいと思います。今年も「KYOTO CRAFTS MAGAZINE」をよろしくお願いいたします。
竹笹堂
住所:京都府京都市下京区綾小路通西洞院東入ル 新釜座町737
営業時間: 11:00〜18:00
定休日: 日、祝日(臨時営業あり)
Tel: 075-353-8585
HP : http://www.takezasa.co.jp/
STUDIO
TEXT BY MARIE SAKIKAWA
PHOTOGRAPHS BY KUNIHIRO FUKUMORI
17.01.09 MON 16:14