宮川徳三郎商店は1903年創業。代々呉服屋を営んできましたが、創業100年を迎えた2003年に新たな取り組みとして4代目・宮川徳三郎さんがアンティーク着物ショップをオープンしました。「コンセプトは敷居の低い着物屋です」と宮川さん。
レンタル着物の店は多いけれど、そのほとんどがレンタルのみを行う観光業で、着物屋さんがレンタルを行っているところは実は珍しいそう。宮川徳三郎商店の上質な着物をきちんと着られる数少ない店の一つです。
店内に入ると、たくさんのアンティーク着物が並んでいます。100点以上ある着物から、まずは好みのものを選びます。
着物が決まれば別室にて肌襦袢と呼ばれる着物のアンダーウェアに着替えます。
肌襦袢を着たら、宮川さんによる着付けが始まります。まずは肌襦袢の上にさらに長襦袢を重ねて着ます。首もとから見える半襟は、着物の重要なオシャレポイント。
着物と浴衣との大きな違いはこのチラリと見える襦袢や半襟と、着物のコントラストを楽しめることではないかと思います。私は華やかな柄の長襦袢にピンクの半襟を選びました。
長襦袢を着たら次に着物を羽織ります。着物に触れると着物屋さんの質の良いものだと分かります。
私は暖かくなってきた季節に合わてさわやかな青い着物を選びました!
次に帯を結びます。今回は帯の柄がきれいに見えるよう最もポピュラーなお太鼓帯という結び方を行います。
前の柄がきれいに見えるように帯の位置を合わせ、帯の下にある「おはしょり」と呼ばれる着物が重なっている部分を整えます。
後ろは帯に厚みを持たせるために帯枕と呼ばれるものを帯の下に入れ、帯の形を作ります。
こうして着てみると長襦袢、帯揚げ、帯締めなど着物にはたくさんパーツがあることが分かります。
ここ宮川徳三郎商店では全てのコーディネートを自分で行うことが出来ますが、日頃の服でこんなたくさんの色や柄を使わない私たちにとって、着物の全てのコーディネートを決めることは至難の業です。
だいたいの人が「選びきれない!」となるそうですが、その時は宮川さんが着物の色合わせがきれいにみえる法則を教えてくれます。差し色となる半襟、帯揚げ、帯締めの3カ所のうちのどこか2カ所の色を揃えることがきれいに見えるコツだそう。
私の場合は着物と帯が同系色なので、帯との境目が分かるよう帯揚げは目立つ赤を持ってきて、帯締めを同じ赤に合わせて統一感を出しました。
素敵な着物を着たら、外へ出かけて、一日を過ごすところまでが体験です。
出かけるときは羽織を借りることも可能(別途1,000円)。今回は長羽織と呼ばれる昭和初期に流行した丈が長めの羽織をお借りしました。羽織ると印象が変わり、レトロな雰囲気に。
まずは宮川徳三郎商店から歩いて5分の場所にある「雑貨店おやつ」へ。可愛い雑貨はもちろん、こだわりが溢れた作家さんのすてきな作品や手作りのおいしいお菓子やジャムがあります。
食事や一息つきたい時は阪急桂駅の近くにある「GLASS HOPPER」へ。おいしい肉料理や燻製料理がいただけるおしゃれな空間のバルです。
中でもおすすめはヴェデット(ホワイト)ビールなどの輸入ビールが生ビールで頂けます。暖かくなってきたこの時期に飲むビールはもちろん最高ですが、着物で飲むとさらに特別感が味わえます!
着物をきて一日過ごすと姿勢や礼儀を自然に意識し、自分がいつもより日本人らしく感じます。こうした体験をすることで着物の作法を学びたい、自分の着物を自分で着付けてみたいという意欲が生まれました。
着付け師である宮川さんは自身のショップだけでなく、修学旅行生のために旅館や料亭へ出張し、着物を着付け、教える仕事も多く行っています。その時は着付けと同時に着物の時の歩き方や作法も教えているそうです。「単純に着物を着るという体験だけでなく、着ることで日本人が忘れつつある礼儀や作法に触れ、大切にしてほしい」と宮川さんは話します。
京都を着物で巡りたいと憧れるたくさんの若い人はぜひとも着付けの職人さんによる本物の着物文化を触れ、大事にしていってほしいと思います。
皆さんもこの春はアンティーク着物を着て桂を巡り、いつもとは違う発見をたくさんしてみて下さい!
宮川徳三郎商店
住所:京都市西京区桂野里町32−4
営業時間:12:30〜18:00(早朝着付け・レンタルも可)
定休日:水曜日
Tel: 090-1223-0936(要予約)
URL:https://www.toku36.com/
STUDIO
TEXT BY MARIE SAKIKAWA
PHOTOGRAPHS BY KUNIHIRO FUKUMORI
18.04.05 THU 10:36