KOUGEI NOW 2018
Kyoto Crafts Exhibition “DIALOGUE”
「未来志向のものづくり」を意識した作品やプロダクトが並ぶ展示販売会。2018年3月17日(土)18日(日)、「旅と工芸」をテーマに、ホテルカンラ京都にて開催。SANJIKU、金継工房rium、洸春窯、昇苑くみひも、薫玉堂、阪本 修、ハタノワタル、京竹籠 花こころ、中村ローソク、暮らすひと暮らすところ、POLS、ろくろ舎ほか、66組が参加する。3月16日(金)16:00〜18:00には日野明子×永田宙郷のトークイベントも開催。
1978年福岡県生まれ。金沢21世紀美術館勤務、デザイン事務所勤務を経て、EXS Inc.(株式会社イクス)に入社。東京の事務所を拠点に、アート・伝統工芸の分野から、企業の新規事業開発まで、幅広い分野において課題を解決するプランデザインと、デザインディレクションやグラフィックデザインを中心とした活動を行う。http://exs-inc.com
ーー幅広い分野で活躍するプランニングディレクターの永田さん。主な仕事内容を教えてください。
仕事内容は多岐に渡りますが、大きく分けて3種類の仕事をしています。一つ目は、地域でものづくりをしている人に対してのサポート。作り手、伝え手、使い手の関係づくりを一緒に考え、三つの「て」を繋いでいく「ててて見本市」の活動や、「京都職人工房」の講師の仕事などが含まれます。二つ目は、企業との商品開発や事業づくりのサポートです。高岡の老舗菓舗「大野屋」の高岡ラムネなどがそうですね。三つ目は、先端マーケティングや先端技術系のリサーチの案件。
どれもクライアントや規模は様々ですが、「今までのやり方だとうまく行かないから、次のやり方を一緒に考えて欲しい」と依頼から始まるところが共通しています。
ーーそのような仕事内容になったきっかけは?
子供の頃からものづくりが好きだったこともあり、大学では近世の日本工芸史を専攻し、卒業後はアートやデザインで知られる金沢21世紀美術館に勤務しました。その後、インテリアや商業空間などに伝統技術のコーディネートを行う立川裕 大さん (t.c.k.w代表:http://tckw.jp/) の 元で働き、それが折り重なって今の仕事になった感じですね。
あと、ちょうどインターネットが普及した世代という事もあり、新しい分野がどのようなものかにもとても興味があります。最新の技術や素材のリサーチに関わることもあり、最近ではTwitterのデータを分析してコンテンツ化するウェブサイトの制作や、大企業の実験的なプロジェクトにも参画しました。一見、仕事の幅が広くは見えますが、僕にとって、伝統工芸もテクノロジーも「人の知恵」という点では同じで、これからの社会の中でどう残って、どう変わっていくのかに興味を持って仕事をしています。
ーー永田さんと京都との繋がりは?
大学生の頃から最低でも季節に一度は来ていました。現在は「京都職人工房」に加え、「ホテルカンラ京都」内の「金継工房リウム」(https://kintsugi-rium.jp)も運営しているので、定期的に訪れています。
ーー「DIALOGUE」の会場となる「ホテルカンラ京都」ですね。このプロジェクトのテーマである未来志向のものづくりについて、永田さんはどんなものづくりが未来志向と考えていますか?
工芸における「未来」のイメージは、自分がどんなものづくりをしていくかという一人称の未来、どう作品や技術が残っていくかという二人称の未来、そして、古くから続く工芸ならではの、過去から未来のパイプ役としての三人称の未来があると思います。林業も、いつか誰かが使うと信じて木を植え、山を守り、これまでの山を作ってきた経緯を踏まえた、未来への引き継ぎを行います。工芸にもそれと同じ時間軸があり、それが工芸の面白さの一つだと思います。
ーー作り手にとってはモチベーションの保ち方が難しそうですね?
工芸の担い手たちは工芸の道を選んだ時点で、過去の先人がいたから自分がそこにいて、そのバトンを自分もまた、引き継ぐべき誰かに引き継がないといけない立場だという事が意識の中にあると思うので、本人達にとっては身体の一部になっている考えじゃないかな、と思います。
ーー現在、工芸に注目が集まるのはなぜでしょうか?
今の時代、どれだけ無駄を省くか、便利にするかという合理性が優先されますよね。「時間」や「手間」や、流通などの「中間」のような、「間」が省かれてしまいがちです。多少はいいけれど、それが行きすぎて、合理性に合わせて人が生活しなくてはいけなくなることはどうかと思って。まさにそれこそが「間抜け」ってことなのかなと。
工芸とは、例えば、ペンキでスプレーすれば数十秒で済むことを、漆で塗るとなると何日もかける必要があるように、合理性とは真逆で、時間もかかるし手間もかかるもの。極端な話をすると、世の中にとっては、なくてもいいものかもしれません。でも、それがあることで、違う価値が見えることもあると思います。合理性だとか産業規模だけでは語れない工芸がしっかりと残らないと、「なぜものを作るか」、「人の生活とはなんなのか」という振り返りができなくなるような気がしています。だからこそ今、必要とされているのではないかと思います。
ーー工芸について、今考えるべきことは?
工芸の価値は、道具としての機能や独自の様式美もあるでしょうが、何よりも多くの「間」を含んでいることだと思います。便利とか格好いいという要素は、現代の製品の方が多くありますが、「間」を減らし縮めるものばかりで、工芸とは真逆な部分を感じます。だからこそ、手間と時間がかかる理由を伝えたり、一緒に未来へと進んでいける仲間を探したり、空間の雰囲気を変えたりと、工芸はどう「間」を大切に作っていけるかを考えるべきだと思います。
ーーその意識は現代の作り手に感じますか?
作り手よりも生活者の方に出てきてると思います。例えば金継ぎもそうだけど、絶対新しいものを買い直すほうが早くて安くて便利なんですよね。けれどひとつ手間をかけることが、自分の生活の中に、なにかしら違うストーリーと信頼をもたらしてくれることってあるじゃないですか。それに共感する人がどんどん増えてきている。だから作り手も、分かってくれる人がいる以上、自分たちもそういうものづくりをしてもいいんじゃないかと波及していってるように思います。
ーー3月に開かれる「 KOUGEI NOW」は「旅と工芸」がテーマです。ホテルでの展示会の開催についてはどう思われますか?
ホテルは日常生活の場じゃないし、だからといってギャラリーみたいに対峙するた めの場でもない。ホテルは日常と非日常のちょうど中間の存在だと思う。ただ、体 験する感覚が、見る人や展示する人のホテルへのイメージや経験でだいぶ違ってきてしまうので、そこが面白い部分であり、難しい部分でもあるけど、いいアイデアだし、いいチャレンジだと思います。
あと、僕自身、ホテルをつくる仕事に多く関わっているのですが、ホテルが泊まるだけの場所じゃなくて、街にとって宿泊以外のどんな機能や価値を作れるかと、いつもホテルのオーナーやスタッフと悩むので、ホテルにとっても可能性を広げてくれる面白い取り組みだと思います。
ーー今回の「DIALOGUE」のどんな部分が魅力だと思われますか?
一番の魅力は、タイトルそのままですが、作り手と「DIALOGUE=対話」できることじゃないでしょうか。工芸ってモノの形で生活に入っていくし、古美術的なモノも多いから、作り手と対話する機会がありそうでないし、ホテルという日常ではない場所だからこそ、あまり道具としても見なくていいので、発見や気づきもしやすいと思います。
それにいろんな人が来るだろうから、違った価値観や楽しみ方を対話しながら探っていくこともできるし。わからないことや知りたいことがあったら、目の前にいる作り手に聞けばいいし。「DIALOGUE」にはそんな感じで対話できるからこその楽しさが準備されていると思います。
だから、子供連れで来て欲しいし、孫連れとか最高。そして、会場になるゆったりと落ち着いたホテルの中で、いっぱい対話すればいいと思う。その結果、自分なりの工芸を考えたり、手にしたり、同時代を未来に向かって生きる作り手と仲良くなったりしたら、本当に素敵ですよね。
日野明子×永田宙郷トーク
日時:3月16日(金)16:00〜18:00(開場は30分前から)
場所:THE KITCHEN KANRAホテルカンラ京都 本館 B2F
申込:下記URLの申込みフォームよりお申し込みください。
https://business.form-mailer.jp/fms/931da1c580774KOUGEI NOW 2018
Kyoto Crafts Exhibition “DIALOGUE”
会期:2018年 3月17日[土] 11:00~18:00 / 3月18日[日] 11:00~17:00
※3月16日は、招待客・プレスに向けた内覧会を行います。
会場:ホテル カンラ 京都(京都市下京区北町190)
URL:http://kougeinow.com
主催:京都府
共催:京都リサーチパーク株式会社 / ホテル カンラ 京都
協力:Design Week Kyoto実行委員会、CEMENT PRODUCE DESIGN、EXS.Inc、
KYOTO CRAFTS MAGAZINE、京都市、「伝統産業の日」実行委員会、D&DEPARTMENT KYOTO by 京都造形芸術大学
INTERVIEW
TEXT BY MAKO YAMATO
PHOTOGRAPHS BY MAKOTO ITO
18.01.30 TUE 20:37