岡山製陶所「陶芸・ろくろ体験」
【所用時間】2時間
【料金】¥3,000(税込)
【開催日】10:00~18:00(時間外も応相談)
【予約】要
編集部最年少の崎川が様々な職人技に挑戦するシリーズ第6弾は「陶芸・ろくろ体験」です。今回は東福寺の近くにある岡山製陶所を訪れました。 焼きものには大きく分けると陶器と磁器の2種類があります。皆さんはその違いをご存知ですか? 陶器は土が原材料です。焼くと貫入(かんにゅう)と呼ばれる細かいひびが入るのが特徴です。一方磁器は陶石という石を砕いたものが原材料で、見た目もつるんとしています。 ここ岡山製陶所では陶器と磁器の性質を兼ね備えた半磁器を制作しています。陶器のようにあたたかみのある色合いで磁器のように貫入がない焼きものが出来上がります。
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今回教えて頂いた岡山さん。岡山さんの手の動きで土の形がみるみる変化する様子は見ていてとても気持ちいい。
工房は奥が制作スペースとなっており、手前には岡山さんの作品が並びます。 岡山さんの作品は「三島手・印花(みしまで・いんか)」という伝統的な装飾技法を使って制作されています。鉄分を多く含む赤土に陶印(陶磁器で作られた印)を押し、そこに白い土を埋め込むのが一般的な印花の方法ですが、岡山さんは仁清土に陶印を押し、黒い土を埋め込むという独自の手法で作品を展開しており、これを黒印花(くろいんか)と名付けています。
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岡山さんの作品「黒印花茶碗」
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黒印花以外にも三島手・印花の技法を応用したさまざまな作品が並びます。
まずは5kgの土を練る「土揉み」の作業に挑戦です。土の堅さを均一にし、中の空気の抜いていきます。腕の力ではなく、体重をかけて揉むようにと言われましたが思っていた以上に固くて私の力ではびくともしません。とても大変な作業なので岡山さんに交代。中の空気をぬく菊揉みという方法を見せてもらいました。毎回この菊揉みを100回ほど行うそうです。土揉みを終えた土を触ってみると最初に比べ柔らかくなっています!
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この力のいる作業を女性の陶芸家の方も皆行うそう。わたしにはとても無理だと感じますが3週間毎日練習すれば出来るようになりますよと岡山さん。

出来た凹凸が菊の花びらのように見えることから「菊揉み」と呼ばれ、端のほうには空気が抜けた小さな穴がたくさんあります。
土揉みが完了したらろくろを回し、土を上げたり、下げたりすることでさらに密度を均一にする「土殺し」を行います。この土殺しをきちんと行うことがこれからの成形にも大きく関わる重要な工程となります。 岡山さんが土に触ると気持ちの良いくらいスムーズに動いていきますが、わたしが触ると全く動かず・・・ただ姿勢はいいと岡山さんが褒めてくれました!
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脇はきちんと締めて良い姿勢に。
土殺しが出来たらついに成形に入ります。体験では作る形を自分で決めることが出来ます。私はお茶碗を3つ作ることにしました。
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まず中心に親指を第一関節まで突き刺し、次に両方の親指をいれて徐々に広げていきます。この時点で一個のお茶碗に使う土の量が決まります。
お皿の形になるようさらに両手で広げていきますが、同じ場所ばかり押さえていたためうつわの端より中心部の方が薄くなったり、端の形が変形したりと失敗続き。失敗した部分はカットして親指を突き刺すところからやり直しです。
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2回目はうつわの端が変形し、失敗。一度形が崩れたら修正するより、やり直した方が早いそう。下の写真のように岡山さんと同じ手の動きをつもりがなかなか思う形になりません。
何度も教えてもらい、1個目が完成しますがとても分厚いうつわになってしましました。薄いほうが軽くて使いやすいと聞き、次は薄いうつわに挑戦です。 しかし薄いうつわを作りたいという欲がですぎてしまい、2個目がなかなか完成しません。最初に褒められたはずの姿勢も崩れてしまいました。「気持ちの乱れは姿勢とうつわに現れます。」と岡山さん。 お茶碗3つ作るなんてすぐにできると思っていたのに、いつ完成するだろうとだんだん不安になってきます。
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何度失敗しても土はいっぱいあるので大丈夫。失敗したものもまた土に戻ります。
岡山さんから「考えすぎずに外のカーブをイメージするといいよ」とアドバイスをもらい、再び挑戦。ここでやっといい感じになってきました! うつわの形を追求しすぎるのではなく、姿勢や感覚を大切にすることが成功に繋がりました。
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ろくろの回転スピードは調節可能。速度を落としたら、落ち着いて作業を行うことができました。
全体の形ができたら鹿のなめし革でうつわの淵を口当たりの良いように整え、針金で底を慎重に切り離したら完成! 何度も失敗した分だけやりがいもあり、出来たときに喜びが増します。本当に嬉しい!
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最後に完成したうつわ。1つ目のうつわと比べると薄いものに仕上がりました。
ろくろって想像してたよりずっと難しい! 土の堅さ、冷たい感覚、など体験することでしかわからない発見がたくさんあります。テレビなどでろくろの映像を見る機会があり、少し知ったような気になっていたことに反省します! 土で形を作る、単純なようですが土作りからはじめ、実はたくさんの工程があることもわかりました。
岡山さんに陶芸を行う上で一番重要に考えている工程はなにか伺ったところ意外にも最初の「土揉み」という答えが返ってきました。 過去に先輩の陶芸家の方から最初の土揉みが全然なっていないと注意を受けたそう。丁寧に土揉みを行うようになってから作品に変化が現れ、土揉みの大切さを理解したというお話を聞かせてくれました。 陶芸と言えばろくろを動かしている様子ばかりに目が行きがちですが、最初をおろそかにしてはいい作品はできないんですね。
次回は私が作ったお茶碗を素焼きしたものに絵付けを行います。絵のデザインを考えるのも楽しみです!
岡山製陶所
住所:〒605-0976 京都府京都市東山区泉涌寺東林町36−15
営業時間:10:00~18:00
定休日: 不定休
Tel:090-3966-5188
Mail:kuroinka@gmail.com
STUDIO
TEXT BY MARIE SAKIKAWA
PHOTOGRAPHS BY KUNIHIRO FUKUMORI
17.04.13 THU 17:25