−− 現在の仕事内容を教えてください。
藤田:機織りの準備から織り作業など、織り手としての仕事が半分、他の時間はFacebookの運営や、体験・見学の案内など、広報の仕事をしています。綴織の織り手として作業に携わることで、広報や接客をする時にも、織物の仕事のことをしっかりと伝えることが出来ます。
−− 工芸の世界に関わる切っ掛けについて教えてください。
藤田:京都に来るまでは美術館や図書館で働いていたのですが、本当に自分がやりたい事は何だろうと考えた時に、日本の伝統文化や美術の勉強がしたいのだと気がつきました。そこに、元々好きで勉強していた英語を使い、日本の伝統文化を海外に発信していきたいという思いが合わさり、ハローワークを通じて「京都伝統産業ふれあい館」を紹介してもらい、31歳から3年あまり勤めることになりました。
−− 京都伝統産業ふれあい館ではどういった事をされていましたか?
藤田:京都伝統産業ふれあい館では、常設展示場やギャラリーの展示品の入れ替えや販売、団体見学時の展示説明などを行っていました。ほかに職人さんの実演のサポートや、「舞妓舞台」の業務などです。舞妓舞台では日本語と英語で司会し、舞妓さんの装いの解説や舞妓さんへのインタビューなどを行っていました。そういったお仕事を通じて、様々な分野の職人さんと知り合うことが出来たのですが、奏絲綴苑の代表の平野喜久夫さんとも京都伝統産業ふれあい館の関連で知り合いました。
−− 奏絲綴苑に入られる経緯を教えてください。
藤田:京都伝統産業ふれあい館を退職した後も、引き続き京都の文化や工芸を勉強していくつもりでいて、どうしようかと考えている時に平野さんから奏絲綴苑を手伝ってほしいと声を掛けて頂いて、有り難いお話だと思い、お世話になる事になりました。
−− 綴織をされていて難しいと感じることは?
藤田:綴織は手織なので、経糸(たていと)と緯糸(ぬきいと ※横方向の糸のこと)を自分の頭でちゃんと理解して絵柄をつくるのが頭を使う作業ですし、綴織の特徴である「割杢(わりもく)技法」(異なる色の単色糸を撚り合わせることによって、中間色をつくる技法)も、自分の求める色を際限なく作れるので、色の事も考えながら織っていく事が大変難しいです。
−− 綴織の魅力は何ですか?
藤田:綴織は機械を一切使わず、手作業で一越し一越し、自分の爪も使って織るのですが、“糸で描く絵画”と言われるように、絵を描くのと似たところがあります。例えるなら、経糸はキャンバス、緯糸は絵の具、杼(ひ)は絵筆といった感じです。手作業でしか出来ない技術を使い、織り手の感性を自在に表現できるところが魅力です。
ーー今後の目標について
文章を書くのが好きで、英語への翻訳も行っているので、これからも知識と経験を深めて綴織をしっかりと伝えられる人になりたいと思っています。
インタビュー中に「職人は物を作れるだけではなく、ものごとを発信する事や人とコミュニケーションする事も必要」と、これからの職人の姿について熱く語ってくれた平野さん。そして「日本の伝統文化」を海外に発信していきたいと話してくれた藤田さん。お二人が共通して語った「発信」という言葉には、自分達の好きな綴織をしっかりと未来に繋げたいという気持ちが込められていると感じる事が出来ました。
奏絲綴苑
URL:http://soushitsuzureen.com
奏絲綴苑facebookページ
URL:https://www.facebook.com/soushitsuzureen
INTERVIEW
TEXT BY MASAHIRO FUJII
PHOTOGRAPHS BY YUUKI KIMURA
17.01.06 FRI 10:26